米国ネブラスカ州リンカーンに消費者向け製品部門を置くカワサキモータース・マニュファクチャリング(株)(以下、KMM)は、カードベースだったカンバンシステムを電子化されたカンバン電子ソリューションに置き換えました。新しい eKanban ソリューションは LANSA のツールセットを使用してKMM の社内開発チームによって開発され、KMM の IBM i および LANSA ベースの ERP システムと統合されました。製造ライン及び倉庫のスタッフは iPad から LANSA の LongRangeで開発されたネイティブアプリケーションを使ってソリューションにアクセスします。工場のスタッフは、サイクルカウント、スクラップ報告、在庫の場所移動の記録や他の倉庫および製造ライン関連のタスクのためのモバイルアプリも使用しています。

「このソリューションを使用することで、一日あたり3,500ドル以上の経費を削減し、我々は非常に迅速に投資回収を行なえることを期待しています。これまでに我々がやったことは、まだほんの始まりに過ぎません。我々の開発者は、このプロジェクトの最大の部分であるERPシステムの機能を強化してきた大きな経験があります。LongRange はこのプロジェクトの終盤になってから登場したのですが、当初我々はネイティブモバイルアプリケーションを自分たちで開発することができるとは思っていませんでした。モバイルアプリは当社のIBM iの3人の開発者によって開発されました。インストールからはじめてチュートリアル、開発、テスト、実装まで、わずか2ヶ月しかかかりませんでした。」とKMMのITマネージャー、Jay Kamradt 氏は語っています。

"このソリューションを使用することで、一日あたり3,500ドル以上の経費を削減し、非常に迅速に投資回収を行なえることを期待しています"

挑戦へ

  • KMM の ITマネージャー Jay Kamradt 氏製造ラインの在庫管理の担当者がLongRange で開発されたアプリを iPad で使用
    KMM の ITマネージャー Jay Kamradt 氏製造ラインの在庫管理の担当者がLongRange で開発されたアプリを iPad で使用

米国ネブラスカ州リンカーンに消費者向け製品部門を置くカワサキモータース・マニュファクチャリング(株)(以下、KMM)は、全地形対応車(ATV)、パーソナルWatercrafts(ジェットスキーR)、ユーティリティ・ビークル(ミュール)、レクリエーションユーティリティービークル(RUV-Teryx)、ATVと実用車の車輪を製造しています。これらの製品は、北米全体へ出荷され、また、日本、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド、そして世界中の様々な場所に輸出されています。

KMM は、部品を大量に保管したり過剰発注したりすることを排除する "ジャスト・イン・タイム" に基づいて稼動しています。このような製造環境において、倉庫から生産現場に部品を移動する必要が発生したのを知らせるのにカンバンが使用されます。

従来は、カードを使用したカンバンが部品箱に取り付けられていました。製造ラインにある部品箱が空になったときに、空のボックスと添えられたカンバンカードは工場の倉庫に戻されます。工場の倉庫では、製造ラインにある空の部品箱をカンバンカードに記載された部品の量を補充した部品箱と置き換え、サプライヤーに、カンバンカードに記載された量の部品を補充するように連絡します。サプライヤーの注文が工場倉庫に届くと、カンバンカードが箱につけられます。これが1サイクルです。この処理は、ほんの少しのバッファのみで、必要な部品とほぼ等しい量が提供されていることを意味します。

KMM では最近まで、4つの製造ラインでカンバンカードシステムを使用していました。一日あたり4,500枚のカンバンが使用され、各カンバンサイクル中、8~10人がカードを扱っていました。カードを扱うためにかかる人件費は、一日あたり3,000ドルにのぼると推定されていました。

Kamradt 氏によると、マニュアルのカードシステムには、他にも非効率を招く要因があったと語っています。「カードはなくなる可能性があり、それにより部品の納入が遅れたりします。また、スタッフが早くカンバンカードを回してしまうのを防ぐ方法はありませんでした。彼らはわずか4時間のバッファが必要なときに、製造ラインで時には在庫を3-4日分溜め込んだりしていました。」

「我々は2005年から、eKanban について、また、他の在庫や生産関連のタスクのためにモバイルデバイスを使用することについて考えていました。他のプロジェクトが優先され続け、2011年10月にやっと、主要なビジネスユーザーが集まって、何が必要かが検討されたんです。我々は、社内のERPフレームワーク・ソリューションをカスタマイズした経験はありましたが、ネイティブモバイルアプリケーションを自分たちで開発するスキルを持っているとは思っていませんでした。LANSA が LongRange のモバイル開発ツールを作った時、プロジェクトが本格化しており、2012年4月にベータプログラムに参加することにしたんです。」

"ネイティブモバイルアプリケーションを自分たちで開発するスキルを持っていたとは思っていませんでした"

eKanbanの効率性について

  • モバイルアプリは、製造ラインに おける在庫を記録、追跡するために 重要な役割を果たしている
    モバイルアプリは、製造ラインに おける在庫を記録、追跡するために 重要な役割を果たしている

LANSA のプロフェッショナル・サービス・コンサルタントの指導のもと、KMM は、最初の LongRange モバイルアプリを開発しました。このアプリを使って、"部品警察"と呼ばれる製造ライン在庫管理者は製造ラインにおいて納入された部品をスキャン・入力したり、製造ラインや床に置かれている部品の残量を管理したりすることができるようになりました。例えば ATV など、特定のユニットの組立が開始されると、ERP システムに通知され、そのユニットに必要な部品が割り当てられます。今では各製造ラインにどの部品がどれだけあるかが正確に記録されているので、製造ラインにおける部品の在庫が指定された最小値を下回った場合、自動的に補充用のトランザクションが起動されます。

「以前は一度部品が倉庫を離れたら、製造ラインのどこにどれだけあるかを記録する手段は持っていませんでした。今では、倉庫であるか、製造ラインであるかにかかわらず、敷地内のどこにどれだけの部品があるかを、リアルタイムで正確に記録しています。」

「モバイルアプリを持ったことで、完全な精度を手に入れることができました。現在、工場では部品についてはわずか4時間分、さらに小さいものについてはそれ以下の分しか確保していません。在庫の手順をスリム化するのに加え、以前よりより良い、より安全な作業環境を得ることができるようになりました。これまでは製造ラインでは箱や部品が散らかって安全上の問題になる可能性がありました。空いたスペースによって、よりフレキシブルになり、製造ラインで追加モデルを生産するなどの可能性を開くことができます。」

「プロジェクトをはじめるとき、投資回収分析をしました。毎日4,500枚のカードを使用し、8~10人が各カンバンサイクルに関係すると仮定し、カードを扱うのに平均10秒かかるとして、平均賃金で時間あたり30ドルとすると、スタッフが手動でカンバンカードを処理する必要がなくなると、人件費で一日あたり3,000ドル、年間747,000ドルを節約することができるだろうと推定しました。」

ナイフで各箱にスリットを入れ、カードを挿入して回ることも必要なくなるので、KMMは更に毎日190ドル、年間47,500ドルを節約できると期待しています。今はバーコード化されたピックチケットのラベルが印刷され、箱に貼られています。その他、部品不足を分析する為に使用されていた1日あたり5時間の労働コストなど合計年間155,000ドル以上のコスト削減が見込まれています。

「eKanban に対する投資の回収は非常に短く、6ヶ月未満で行なえるだろうと考えています。」と Kamradt 氏は語っています。

"モバイルアプリを持ったことで、完全な精度と、優れた品質管理を手に入れることができました"

より多くのアプリケーションで、更に経費削減

  • 製造ラインのスタッフは、サイクルカウント、スクラップ報告、倉庫内の在庫移動の記録や、製造ラインに関連したタスクのためにモバイルアプリを使用
    製造ラインのスタッフは、サイクルカウント、スクラップ報告、倉庫内の在庫移動の記録や、製造ラインに関連したタスクのためにモバイルアプリを使用

LongRange のチュートリアルと最初のアプリの開発で、KMM の IBM i の開発者はモバイルアプリの開発に慣れることができました。3人の開発者のチームは、更に5つのアプリケーションを開発しました。すべてのアプリはネイティブであり、ドロップダウンリスト、チェックボックス、スキャナーを起動するためのボタンなどを使ってタッチ入力に対応しています。アプリは LongRange が利用できるようになったわずか2ヶ月後、7月初旬に最初の製品ラインに導入されました。他の3つのラインでも、その後2ヶ月以内に導入されました。

スクラップ報告のためのアプリを使って、製造ラインの監督者はスクラップのアイテムをスキャン入力することができます。以前は一日の終わりにスクラップビンに入っているすべてのアイテムを手書きのリストにまとめていました。そのリストのカーボンコピーが品質管理部門に送られ、4つの製造ラインから送られてくるリストをシステムに入力するのにスタッフが一日の大半を費やしていました。このような手順には時間がかかり、手書きであることや再入力が必要なことから、不正確なことが多くなっていました。

「現在は LongRange アプリで、製造ラインで"部品警察"が一日のいつでもスクラップをスキャンし、必要であれば、詳細なコメントを入力します。モバイル技術を使用してプロセスの自動化を図ることで、品質部門の時間を節約し、以前より格段に正確な、追跡可能な情報を作ることができるようになったのです。」と Kamradt 氏は語っています。

サイクルカウントのためのアプリを使うと、スタッフはフロアで在庫を調整し、必要に応じてピックチケットを生成することができます。別のアプリでは、スタッフが倉庫内の在庫の移動を記録することができます。フロアには、ワークステーションがありませんでしたので、以前はこれらの在庫移動は記録されませんでした。それによりスタッフが在庫を見つけることができずに無駄な時間を費やすこともありましたが、今では在庫の記録がはるかに正確になっています。

例えば ATV のエンジンに何か問題があった場合、修理のために製造ユニットを取り出す必要があります。そのような場合に、製造ラインの管理者はオンライン/オフラインの報告のためのアプリを使うことができます。「以前は、これらのユニットは製造ラインのすぐ隣にあっても、それがいつ持ってこられたのか、同じ問題が何回起きているのか、我々にはわかりませんでした。現在はユニットがオフラインになったときにその理由と共にリアルタイムで記録しています。これにより、製造ラインのスタッフのトレーニングの問題なのか、サプライヤーの部品の問題なのか、データを分析し、よりタイムリーに問題に対処することができます。リアルタイムでの記録により、より良い品質管理が可能になっています。」と Kamradt 氏は語っています。

設計変更通知(ECNs)のためのアプリケーションを使用して、バギーで別のラジエーターを使用することなど、変更された部品表がいつから発行になるかをリアルタイム記録できるようになりました。古いシステムでは、変更が製造ラインで行なわれ、新しい部品を使った最初のユニットの VIN(車両識別番号)が一枚の紙に記録されていましたが、ERP システムでは部品表は当日の夜の特定のジョブまで変更できませんでした。その他の詳細についても、VIN同様にバックフラッシュする必要があり常に正確ではありませんでした。

現在では、予定されている ECNs について"部品警察"に知らせ、彼らが LongRange を使って正確な時間にその部品表を有効化できるアプリがあります。我々は現在、部品がどこでどれだけ使用されているのかを正確に記録しています。何か品質の観点で問題が発生した場合、どのVINが影響を受けているかを正確に把握することができます。」と Kamradt 氏は語っています。

"ユーザーは、LongRangeで開発されたアプリが直感的で信頼でき、安定していると感じています"

結論

  • ユーザーは、LongRangeで開発されたアプリが直感的で信頼でき、安定していると感じています

情報システムのアシスタントマネージャーの Paul Kramer 氏は語っています。「我々はRPG 版ではなく、LANSA 版の LongRange を使用しています。我々の開発者はいろんなバックグラウンドを持っています。RPG の経験がある者、COBOL の経験がある者、Microsoft NET のスキルがある者、などです。社内のスキルを使用して、当初はブラウザベースのモバイルアプリしか選択肢はないだろうと思っていましたが、それでは外部スキャナとの連携が難しく、ユーザーの使い勝手も悪くなってしまいそうでした。モバイルアクセスは eKanban のパズルの一部でしかありませんが、非常に目に付く、本質的な部分です。LongRange を使うことで、我々は、モバイルアクセスを含むプロジェクト全体を自分たち自身で扱うことができました。 」

「我々の開発者は、LongRange が習得しやすく、開発が早くできるということに気づきました。チュートリアル、開発、テスト、実装と行なっていき、インストールを含めわずか2ヶ月でアプリを手にすることができたのです。」と、Kamradt 氏は続けます。

「フロアにいるユーザーによると、LongRange で開発されたアプリは直感的で、信頼でき、安定していることということでした。今までのところ、問題は発生しておらず、コードを再検討する必要も発生していません。アプリを開発し導入してから、ずっと正常に実行されています。アプリは現在、我々の新たな作業フローの重要な一部であり、もはやそれらなしでは製造ラインを回すことはできません。 」

「LANSA の ERP のフレームワークを 2002 年に実装して以来、我々は、スタッフが働きやすくする為に、IT資源の多くを捧げてきています。生産現場はお金を稼ぐところであり、我々はそのプロセスを改善するときが来たと判断したのです。我々はプロセスを改善し続け、製造ラインにも、また品質管理や倉庫にも、更にモバイルアプリを展開しようとしています。」と Kamradt 氏は話を結びます。

「他のIBM i ユーザーへの私のアドバイスは、モバイルアプリケーションをユーザーに提供することに思い切って取り掛かるべきだということです。すぐにメリットを実感するでしょう。」

"チュートリアル、開発、テスト、実装と行なっていき、インストールを含めわずか2ヶ月でアプリを手にすることができたのです"

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